ポップでキュートな郷土菓子「おいり」を知ってる?

公開日:2015/5/20

走り梅雨といった風情で雨の降る日が多くなってきたこのごろ、もうすぐ6月、梅雨入りの季節である。
さて6月といえばローマ神話におけるユピテル(Jūpiter、ジュピター)の妻にして結婚生活の守護神、ユノ(Juno、ジュノー)の月。「ジューン・ブライド」ともいわれるように結婚の月でもある。結婚式には引き出物がつきものだが、香川県の西部から愛媛県の東部にかけて「おいり」と呼ばれるカラフルなお菓子が用いられる風習がある。

パステルカラーのガムかキャンデーのよう
パステルカラーのガムかキャンデーのよう

そもそもはお城の姫君のお輿入れの際、領地の農家の人がお祝いとして五色のあられを献上したことが始まり。その後嫁入りの“入り”と火で煎る煎りものの“煎り”をかけて「おいり」と呼ばれるようになり、婚礼の引き出物や近隣へ配ったりする、欠かすことのできない“嫁入り道具”になったとのこと。

婚礼だけに限らずスーパーなどでも売られている
婚礼だけに限らずスーパーなどでも売られている

引き出物として紅白の化粧箱につめられているものの他に、スーパーなどではシンプルな包装で販売されており、普段使いのお菓子として、またお土産などとしても重宝されている。

実際これがどういうものかというと、甘く味付けした餅を薄く延ばして乾燥させ、一辺5ミリ程度のさいの目に切りわけ、その名のとおり釜で煎ったもの。こうすることでサイコロのような生地が丸く膨らみ、まるで真珠のように落ち着いたつやのある真っ白な玉になるのだ。あとは五色に色付けすれば出来上がり。こう書くと簡単なようだが、出来上がるまでにはなんと1週間、意外と時間と手間がかかっている。

非常に薄い殻の中はほとんど空洞
非常に薄い殻の中はほとんど空洞

丸く膨らんだおいりを割ってみると中はほとんど空洞で、あたかも殻のような表面は非常に薄くもろい。口に入れると舌先に控えめな甘さを感じ、噛んだ瞬間ほのかなニッキ(肉桂、シナモン)の香りを残してはらりと消えてなくなってしまうような、可憐で極めてはかないお菓子なのだ。

昔ながらの郷土菓子を今風にアレンジ

かわいらしい見た目と軽い食感を生かしてトッピングに
かわいらしい見た目と軽い食感を生かしてトッピングに

今の時代でも十分そのままおいしく食べられる「おいり」。しかしせっかくだからより今風にアレンジしてみよう。カラフルでかわいらしい見た目と、その極めて軽い食感はスイーツのトッピングにぴったり。ちょうどセブンイレブンから「セブンゴールド 金のバニラアイス」が発売されたばかりなので、今回はこれとあわせてみた。

ただの箸休めだけでなく新たな食感としても
ただの箸休めだけでなく新たな食感としても

アイスに添える箸休めとしてはウエハースが一般的だが、「おいり」はそれよりはるかに軽く、はらりと消えて食べるリズムを崩さない。

さらにアイスと一緒に食べるとシャクシャクシャリシャリした食感はまるで極薄の氷のよう。しかしそれと違い、「金のバニラ」の北海道産のクリームや卵の深いコクとうまみを薄めることなく、ただ涼やかな歯触りだけを与えている。

濃厚かつなめらかな「セブンゴールド 金のバニラアイス」に「おいり」の軽い歯触りが加わって、その全く新しい食感には軽く感動すら覚えた。

アイスだけでなくヨーグルトのトッピングとして、またコーンフレークの代わりにパフェの底に敷いたりやはりトッピングにしてもおもしろいだろう。今に通ずる昔ながらのキュートでポップな郷土菓子、もし手に入る機会があったらいろいろ試して欲しい。

それではそろそろ日の入りなので、ここで筆置きひと寝入り、とさせてもらおう。

特集

ライター:菅目直衣

四国在住の男。菅目 直衣(すがめ なおい)と申します。 変わったもの、珍しいもの、未知の食文化に興味あり。 そして何より旨い物が好き。 東を向いては珍味をつまみ、西を向いてはシリアル喰らう。 今日も今日とて味覚を求め、自転車漕いで北・南。新製品もなつかしの味も、みんなまとめて持って来い!

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