きなこもちのようなパン?
多くの地域は梅雨入りし、恵みの雨降る今日この頃、田植えをひかえて二毛作の麦が刈り入れられていく。麦といえば最も身近なのはなんといっても小麦。製粉した小麦粉は水で溶いて衣にしたり、こねて麺やお菓子にしたりと多種多様な用途がある。パンはその中でも大きな比重を占めるひとつだ。
これまではもっぱら輸入小麦が用いられてきたパンであるが、最近新しくパンに向いた国産の小麦が開発され、徐々にシェアを伸ばしてきている。そんな国産のパン用小麦を使ったPascoの菓子パンシリーズから、今回は「国産小麦のきなこおもちぱん」をご紹介したい。
小麦粉中、国産小麦「ゆめちから」を65%使用、きなこも国産大豆
国産小麦「ゆめちから」を使用し、あんぱんやバウムクーヘンなどがあるこのシリーズの中で、きなこもちをイメージしたという一風変わったこのパン。袋からすかして見えるその姿は、なんだかゴマをまぶした四角いハンバーガーのように見える。はてさて、どのへんがきなこもちなのかさっそく確かめてみよう。
“きなこ”に“もち”はさていずこ
具のないハンバーガーか上から押しつぶした山食のようにしか見えない
袋から出してみてもやはりきなこもちには見えない。香りも食パンのような塩気のパンのもので、きなこの風味は影も形もなし。
まぶされているのは“新引粉(しんびきこ)”
上側一面にまぶされてこのパンをハンバーガーのバンズのように見せている白い粒は、ゴマではなく“新引粉(しんびきこ)”。蒸したもち米を乾燥させて砕いた、その名のとおり道明寺(関西風桜餅)に用いられる道明寺粉を、さらに細かく砕いて炒ったものだ。言ってみれば小さい餅の粒のようなものだが、きなこもちの食感とは全く異なるうえ肝心のきなこが見当たらない。
スライスされているわけではない
側面を見ると一見切れ目が入っているように見えるが、これは単なるくびれで実際にはつながっている。外から見えず、はさんであるわけでもないなら生地に練りこんであるか一緒に焼きこんであるかだろう。
割った中から現れ出るは
たっぷりのきなこクリームと求肥のシート
ナイフでスパッと真っ二つにしてみると、中にあったのはシート状の求肥とその上にぽってりと乗っかったきなこクリーム。閉じ込められていたきなこの香ばしい風味がふわりと広がった。
食べてみると、ほんのり甘い小麦味の生地はふかふかで、求肥がほどよい甘さとやわらかさでもちもち感を、新引粉が粘質のプチプチ感で食感のアクセントを添えている。そしてきなこクリームがねっとり香ばしくそれらをまとめ上げ、風味豊かな餅菓子のような味わいだ。
粉っぽさはないのでどちらかというと大福のような印象だが、むせたりきなこが飛び散ったりする気遣いもなく、これはこれでいいだろう。パン自体の味わいもこれまでのものとなんら遜色なく、食料自給率の観点からもどんどん「ゆめちから」をはじめとする国産小麦を使っていって欲しいものだ。
それではおりしも芒種の梅雨の晴れ間、麦から稲へと移り変わる田んぼを眺めつつ、ここで筆を置きたい。