アップルタイザーは”Apple(りんご)” と、“Appetizer(食前酒)”という二つの単語を合わせた商品名(登録商標)です。1965年に南アフリカで開発・製造され、日本には1969年から45年にわたって輸入されている清涼飲料水です。
コンビニがなかった時代、あってもセブン-イレブンが23時には閉店していたような時代、「アップルタイザー」は酒屋や高級スーパーの冷蔵庫に座した高価格商品でとても小学生には手が出せませんでした。偶然、飲んだアップルタイザーはそれまでの清涼飲料水とは明らかにフレーバーが高く、リンゴ本来の気品ある甘さで、その美味しさに魅了されたものでした。
ところが筆者が中学生のあるとき、アップルタイザーを飲むのは原産国である南アフリカの人種差別(アパルトヘイト)を擁護することだと教わって、アパルトヘイト自体をその時にはじめて知ったこともあり強いカルチャーショックを受けました。こんなに美味しい物を作っている人たちが驚くような人種差別をしているという事実が想像つかなかったものです。
アパルトヘイトについては、数多くの書物はもちろん映画もつくられており、最近では『シュガーマン 奇跡に愛された男(2012)』などがあります。アパルトヘイトをストレートに題材にしたものでは代表作とも言える『遠い夜明け』や『インヴィクタス/負けざる者たち(2009)』があります。
以下は、『インヴィクタス(Invictus)』の予告編。1994年5月にネルソン・マンデラが釈放されて大統領に就任してからの民族和解、白人/黒人の格差是正といった様々な課題と、それをどう乗り越えていくかをラグビーを通して表現している映画です。監督はクリント・イーストウッド、主演はモーガン・フリーマンです。
(※なおYouTubeでは300円の有償で2時間半のフルバージョンが視聴できるようです)
つい先日、アップルタイザーを手にする機会がありました。以前の深い緑色の太めのボトルから変わって、スリムで明るい緑色のボトルになっています。
手にしてはじめて知ったのですが、果汁100%で、砂糖・保存料不使用です。プレミアムスパークリングアップルジュースというサブタイトルがついています。
さらに裏面ラベルをチェックしてみます。原材料名はりんごと炭酸です。濃縮還元りんご果汁に炭酸を加えた飲み物ということですね。輸入者はリードオフジャパン株式会社。1969年以来45年間にわたってアップルタイザーを輸入して販売しています。途中、不買運動によって輸入が途絶えることがあったのかどうかはわかりません。
さて開封してグラスに注いでみます。炭酸は軽めです。
ほのかに黄色みのかかった水色をしています。いわゆるりんごジュースの色ですが、フルート型グラスに注いだらそれらしく見えるのではないかという気品があります。
飲んでみると炭酸の加減からか、ごく普通のりんごジュースよりも酸味がしっかり効いています。りんごが紅玉系なのかなと思いたくなるようなキリッとした酸味です。30年前に他とは一線を画した品質を感じていたのは、この酸味だったのかもしれないと思いました。
1994年にアパルトヘイトが撤廃されてこの4月でちょうど10年。久しぶりに飲む味はノスタルジックではなく、苦い何かを乗り越えて、爽やかさと明るさが備わったような気がします。
情報提供元:食育通信online
■リードオフジャパン アップルタイザー 瓶275ml